カウチンセーターの毛糸の種類、品質を解説!
羊毛特有の匂いの消し方⁉
■カウチンセーターには独特の匂いがあります。
匂いの元は、本来羊毛がもつ油脂成分(ラノリン)の匂いです。カウチンセーターは撥水性と防寒性を高めるため、染色するために一度脱脂した毛糸を染色後に油脂成分を故意にシミ込ませたものを使用しています。羊毛の油脂成分を抜いた毛糸をそのまま使用した比較的匂いは少ないカウチンセーターもありますが、どうしても少量の油脂成分は羊毛の中に残っているので、匂いがすることもあります。また、年月、時間が経つにつれて匂いが発生する場合もあります。
語弊が生じるかもしれませんが、カウチンセーターは多少なりともそのような匂いがするセーターだとご理解ください。平干しネットなど通気性の良い場所で保管し、また長期保管する場合は防湿・防虫剤と一緒に消臭剤を入れておくと、いくらか匂いは和らいでくるとおもいます。ただ、やはりいくらか匂いは残ると思いますので、どうしても匂いを取りたい場合は、ドライクリーニングで油脂成分(ラノリン)を抜いてしまうのもひとつの方法です。
ただし、油脂成分を抜いてしまうため撥水性と防寒性は低くなり、多少、クタッとした感じになることが予想されます。クリーニング屋さんによっては断られる場合がありますので、お出しいただく前に一度クリーニング屋さんでご相談ください。
また、扱いに慣れた方はご自身で水洗いされ、仕上げに脂(ラノリン)を染み込ませたりもしますが、洗濯状況や方法により品質が急激に低下することがありますので、おすすめはしていません。
■カウチンセーターの毛糸の種類、品質など
◎ヤーン(YARN)とは・・・
紡ぎ糸、編み糸、撚(よ)り糸のことです。本物のカウチンセーターは、良質なウール100%のヤーンを使ってハンドメイドで編み上げています。
◎ピュアバージンウールとは・・・
ウールの中には再生品(リサイクル品)があります。古いセーターを解いて編み直したり、フエルトにしたりもします。ピュアバージンウールはそのような種類のウールではなく、本当に新しいウールですよ、という意味です。ウールの品質を表したものではありません。また「未脱脂」のウールということでもありません。
◎6PLY(6プライヤーン)とは・・・
プライヤーンとは、生地を織る時に使う糸自体が何本の糸を撚って構成されているかになります。カウチンヤーンは原毛を手紡ぎした撚りのない6本の糸を引き揃えて1本の太い糸にしているのがスタンダードとなります。これが6PLYと呼ばれるものです。
カウチンセーターの編み糸は、上の画像のような撚りのない毛糸を使用しています。その撚りのない毛糸を何本(基本的には6本)か束ねてカウチンセーターを編み上げていきます。編み上げていく過程で自然に毛糸に撚りが生じ、シッカリとした編み目のセーターに仕上がってきます。
今現在(2020年)、日本国内で製造販売されている毛糸は製造過程で撚りが入ったものが殆どで、撚りのない、いわゆるカウチンヤーンと呼ばれる毛糸は入手困難となっています。
当店でカウチンセーターの修理を行っていますが、その際に使用している毛糸は、国内産、国外産、撚りのあるもの、撚りのないもの、とさまざまで、割合としては半々といったところになります。入手困難ということもあり、修理の際はご理解いただければ幸いです。
カウチンセーターはカナディアンインディアンの血を受け継いだニッター達による手編みのセーターですので、もちろん修理の際はその独特の風合いを損なわないよう心掛けておりますのでご安心ください。
◎スーパーファインメリノウールとは・・・
メリノウール(羊毛の中でも最高級とされるウール)の中でも平均的な細さが19.5ミクロン(1ミクロン=1000分の1ミリメートル)未満の極細の羊毛繊維(高級ウール)のみを使って毛糸にしたものです。通常肌着に使われ、柔らかな肌触りで強いクリンプ(縮れ)による保温性の高い最高級のものになります。 カウチンセーターに使用する時は、他のカウチンセーターの毛糸よりも少し細めなので編んだとき少し薄手になります。カウチンセーターでありながら、軽くて伸縮性に優れたセーターに仕上がります。
◎レギュラーヤーンとは・・・
カナダ製カウチンセーターの毛糸で、店頭に並んでいるカウチンセーターは、この毛糸を使用したモデルがスタンダードとなります。太さはビンテージヤーンと同じで極太の毛糸なので、カウチンセーターにしたときはペラペラの薄い感じではなくザックリとした厚手の仕上がりになります。
◎ビンテージヤーンとは・・・
毛糸の繊維そのものは通常のカウチンヤーン(レギュラーヤーン/6プライヤーン)と同じですが、毛糸にするときの撚り(ねじり)がゆるく毛羽立っているのでボリューム感が出ます。シングルプライヤーン、2プライヤーンなどがヴィンテージヤーンの代表的なものになります。レギュラーヤーンよりも染めの工程をひとつ増やしているのでカラーに落ち着きがあり、シブい色味に仕上がるのが特徴です。この毛糸でカウチンセーターにしたときは、着古したようなユーズド感を強調したスタイルになります。
◎カナディアンヤーンとは・・・
カナディアンセーターカンパニーがカウチンセーターで採用している6プライヤーン(6PLY)のことです。この毛糸を使用したモデルがスタンダードとなります。
◎ヘリテージヤーンとは・・・
カナディアンセーターカンパニーが、カウチンセーターで採用している「手紡ぎの糸」のことです。全て職人の手によって紡ぎ糸にする昔ながらの手法で紡いでいて、撚(よ)りがゆるく、ボリューム感があります。最も太いクラシカルなシングルプライヤーンの毛糸は、ふわっとした毛羽立ちがあるのが特徴です。また、染めていないためナチュラル(自然)な色であるのも特徴のひとつで、グレー、ダークブラウン、ナチュラルの3色となります。
◎シグネチャーパターンとは・・・
カウチンセーターに用いるカウチン族の伝統的な手法や編み模様やのことです。狩猟民族であるカウチン族の身近にあった自然をモチーフを使っています。雪の結晶などを用いた幾何学的なデザインは、それぞれの部族で独自のパターンがあり、家紋的意味を持っていたと言われています。また、エルク(大角鹿)、鷲、シャチ、サンダーバードの部族の生活に密着した動物の柄もシグネチャーパターンです。カナダと言えばメイプルリーフが印象的ですが、カウチンセーターのモチーフとしては比較的新しいものになります。
◎現代のカウチンヤーンは脱脂をしてあります。
昔は、現地で羊を飼い原毛の刈り取りから糸の製作も行っていましたが、現在バンクーバー島では羊の放牧がなくなってしまいました。糸の製作を行っていた時代には、極寒から身を守るために保温性の高い未脱脂の糸を使ったウチンセーターが編まれていたとしても可笑しくはありません。現代のカウチンセーターはカラフルな糸を使用したものが多いですが、糸を染色するためにも脱脂はしなくてはなりません。
また、未脱脂の羊毛は油分(ラノリン)でベトベトしているのと臭いが非常に強いので、ファッションウエアとして使用するには適していません。未脱脂のカウチンセーターは製品としては存在しないのが本当のところです。ただし、脱脂はしてありますが、微量の油分(ラノリン)はウールのコアの部分に残っています。また、カウチンヤーン独特の風合いを生かすため一度原毛をきれいに水洗いにし、油(ラノリン)を添付しているので防水、防寒に優れています。カウチンセーターを触っていると手にウールの香りが多少なりとも付くので、気になる方はご注意ください。
◎カウチンセーターはピリング(毛玉)になりやすい特性。
カウチンセーターは、1回のご着用でもある程度、ピリング(毛玉)になりやすい特性があります。毛玉のできやすい編み糸(ヤーン)を使用しています。毛玉のできやすい毛糸を使用しているのは、着込んでいくうちに毛糸が毛玉やフェルト状になり、ニットの編み目をふさいで保温性を高くするためです。そのため、新品時は編み目がふさがっていないので、思ったよりも暖かく感じないことが多いです。
着込んでいくうちに保温性が増すのは、カウチンセーターの特性のひとつでもあります。なお、毛玉があまりにも気になるようでしたら、市販の毛玉取り器(約1,000円~約5,000円)で毛玉を取ると綺麗になります。もちろん、ハサミで切り取っても大丈夫ですが、くれぐれも毛玉を引っ張って取り除いたり、むしり取ったりしないようにご注意ください。
◎カウチンセーターに使用するスタンダードの毛糸は6PLY(6プライヤーン)。
通常カウチンセーターは、6PLY(6プライヤーン)と呼ばれる編み糸(ヤーン)を使用しています。6PLYは、細い6本の糸を引き揃えて1本の太い糸にしていて、さらに保温・撥水性を高めるため羊毛糸にラノリンという脂を含ませているので重量感のあるセーターとなっています。本来カウチンセーターは、極寒の地の防寒着として作られているので、どうしても重量感のあるものとなってしまいます。
◎軽いカウチンセーターを探すならスーパーファインメリノウールを使用したもの。
カウチンセーターには、1PLY(シングルプライヤーン)と呼ばれる編み糸(ヤーン)を使用したタイプもあります。1PLYは糸を引き揃えていない1本の糸のため、その毛糸を使用してカウチンセーターを編み上げた際は、6PLYのものより厚みが薄く、軽いものに仕上がります。さらにスーパーファインメリノウールとよばれる毛糸を使用したタイプは、厳選した細い毛を用いた毛糸で脂分(ラノリン)も含んでいないので 1PLYのカウチンセーターよりも軽量となります。
■カウチンセーターの毛糸には僅かに木の皮繊維が混じっています。
カウチンヤーン(編み糸)は羊の毛にアメリカ杉の皮繊維を混紡したものを使用しています。もともとカウチンセーターに使用する毛糸は強度の低いデリケートな毛を束ねたものを使用しているため、この木の皮繊維は強度を増すために必要なのものです。また、毛糸には撚りのないものを使用しているので木の皮繊維を混紡することで毛糸と毛糸が絡み易くなり、編み上りがしっかりしたものになります。木の皮繊維を混紡したカウチンヤーン(編み糸)は、カウチンセーターを編み上げるために必要不可欠でトラディショナル(伝統的)なものとなっています。